ATTIC WORKS

A5052P-H34とH112の違いに驚いた話 | 株式会社アティックワークス A5052P-H34とH112の違いに驚いた話 | 株式会社アティックワークス

2025.12.26 - Fri

A5052P-H34とH112の違いに驚いた話

―「同じA5052」だと思って設計してはいけない理由―

 

こんにちは、山本です。

機械設計の仕事をしていると、材料表に何度も登場するおなじみの材質があります。

アルミ合金の A5052 も、そのひとつではないでしょうか。

耐食性が良く、加工もしやすく、価格も比較的安定している。

「とりあえずアルミならA5052」と考えたことがある設計者の方も多いと思います。

 

しかし先日、A5052P-H34 A5052P-H112 の耐力の違いを改めて数値で確認し、正直かなり驚きました。

「同じA5052なのに、こんなに違うのか」

A5052P-H34 と A5052P-H112。

どちらも同じ A5052 系のアルミ合金ですが、調質が異なります。

H112:圧延後、ほぼ加工硬化が残っていない状態

H34:加工硬化が加えられた、いわば“硬め”の状態

この違いが、機械的性質に大きく影響します。

特に印象的だったのが 耐力(0.2%耐力) です。

 

数値で見ると、

A5052P-H112:耐力 約90~110MPa

A5052P-H34:耐力 約160~190MPa

おおよそ 1.52倍近い差 があります。

同じ「A5052」という名前なのに、
ここまで挙動が変わるのか、というのが率直な感想でした。

 

耐力の違いは「変形のしやすさ」の違い

耐力というと、つい「強い・弱い」という言葉で片付けてしまいがちですが、
設計者目線ではもう少し具体的に考える必要があります。

耐力が低いということは、

早い段階で塑性変形が始まる

一度変形すると元に戻らない

ということを意味します。

つまり H112 は「粘りはあるが、形状を保つ力は弱い」材料 です。

一方、H34 は、

・ある程度の荷重までは形状を保つ

・剛性感もあり、部品らしい挙動をする

という印象を持つ材料です。

この差は、実際の設計では無視できません。

 

 

「壊れない」けど「変形する」怖さ

機械設計をしていると、
「壊れなければOK」と考えてしまいそうになる場面があります。

しかし実際には、

・ボルト締結部がじわっと沈む

・面圧が下がってガタが出る

・組立後しばらくして位置がずれる

といったトラブルの多くは、破断ではなく塑性変形が原因です。

H112をH34と同じ感覚で使ってしまうと、

「計算上は強度足りているはずなのに、なぜか変形する」

という状況になりかねません。

耐力の違いに気づいたとき、
「これは大変な落とし穴だな」と感じました。

 

 

加工性の良さと強度はトレードオフ

H112が悪い材料かというと、決してそうではありません。

・加工しやすい

・割れにくい

加工現場にやさしい

という大きなメリットがあります。

 

 

溶接後の強度低下を考慮する

A5052は溶接可能ですが

溶接部近傍はH112相当まで強度低下

H34を使っても

・溶接構造では設計耐力はH112基準で考える必要ありです。

 

 

まとめ

A5052P-H34 と A5052P-H112。

同じA5052ですが、耐力には大きな差があります。

今回あらためて数値を確認して感じたのは、

材料は「名前」だけで判断してはいけない、調質まで含めて初めて設計材料になる

という、当たり前だけれど忘れがちな事実でした。

機械設計は、材料の性質を正しく理解し、その“癖”と上手に付き合う仕事だと思います。

他のブログをみる